Again
何で、この人は私だったのだろう。

そう思いながらも葵は家族の為、この結婚をした。

自分で決めたことで、家族は止めたけれど、葵の決心は変わらなかった。



立花 葵はホテルの広報課に勤務する27才。

葵の父、義孝は小さな広告代理店を経営していたが、不況で広告費を削る会社が増えたこと、便利なパソコンソフトの普及により、会社内で広告作業をする会社がふえたこともあって倒産してしまった。それが2年前だ。

年齢もあり、ハローワークで仕事を探したが、派遣や日雇いの仕事しか見つからなかった。

母、恵美子もパートを始め、家計を助けていた。3人で働けばなんとか借金も返済していけるところだが、葵には双子の弟がいた。倒産した時期は、大学を受験する年だった。弟達は、大学進学を諦め、働くと言いだしたが、葵はそれを許さなかった。

自宅を売り、団地に住まいを移した。それから両親を弟達が大学を卒業するまでの期間だけと説得し、ホテルに内緒で、夜のクラブのバイトに出た。

ホステスではなく、カウンターで皿洗いをしたり、簡単なつまみを作ったり、掃除をしたりといった雑用のバイトで入った。

掛け持ちはきつかったけれど、家族仲がよい立花家は皆で力を合わせて借金を返済していた。

その借金が一気になくなった。

それは、名波 仁。名波商事の副社長と結婚をしたからだ。

名波 仁は、不動産、金融、エネルギー開発、輸出業、マスコミと手広く事業を展開するグループ会社の副社長。葵はこのスケールの大きな男と見合い結婚をして、借金が無くなったのだ。

正直、いくら頑張って働いても利子を返済しているばかりで、一向に減らない借金に、気が重かった。だから、仁との結婚は葵にとって、救いの神だった。

そんな打算的な考えをしているから、痛い目に逢うのである。人生はうまく出来ているものだ。

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