太陽の日差しがきつくなってきた6月の下旬──

衣替えの期間もとうに終わったというのに、私はひとり冬用の長袖ブラウスに袖を通す。

母に「暑いから半袖に着替えたら?」と言われても、「日に当たると肌が焼けて痛いから」と誤魔化して。

日焼け止めを渡されても「何度も塗り直すのが面倒だから」と断る。

正直暑い。外から聞こえるセミの鳴き声がさらに拍車をかけて、額にはじんわりと汗がにじむ。

出来ることなら半袖がいい。でもこの腕を人目にさらすわけにはいかない。

だから私は年中制服も私服も長袖ばかりだ。

幸い学園では誰も私に進んで話しかけてくる人は居ない。

教室の窓側の一番前の席で皆からは空気のように扱われ、毎日が過ぎていくのをただ流されるように過ごしていた。


そんな高2の夏、私のクラスに転校生がやってきた。

他のクラスから見に来る女子が後を絶たない程のモテっぷり。

「王子が今、こっちを見てくれた!」と転校生の視線の向きが変わるだけで黄色い歓声が飛び交い、教室が騒がしくて仕方ない。

正直、どうでもよかった。

セミロングの黒髪を後ろで1つに束ね、制服の長袖ブラウスは襟元と手首のボタンはきっちり閉めてスカートは常に膝下。

化粧なんて出来るわけもなく、お洒落の欠片もない地味で冴えない私と、転校初日にして『学園の王子』とまで称されるようになったイケメン転校生。

ただ同じクラスという以外、接点などありはしないのだから。


人気のない放課後の教室で、クラスの女子数人に囲まれて始まる課外授業。

「お前、キモいんだよ」

という暴言のラッシュから始まり

「ほら、動くと痛い目見るのはアンタだよ」

身体に刻まれていく消えない傷跡。

なにも変わらない毎日。

これが、私の日常。

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