愛しき日々へ
眼鏡をかけた優しそうな雰囲気の彼に少しだけ驚いた。
「どうぞ…。」
そう声をかけると彼は小さく頭を下げて母さんの方に向かっていく。
見たことない人だ。
母さんの仕事場の人も葬儀には来てきくれて見てきたけどこんな綺麗な顔の人がいたら絶対に印象に残ってるだろうし。
そう思いながら彼の背中を見つめると彼はしっかりとした足取りで母さんに線香をあげて棺の中で眠っている母さんを見ていた。
その様子はあまりにも悲しげで視線を逸らす。
彼は誰だとか、もうどうでも良い。
母さんを見送ってくれる人。それでいい。
それを座ったまま下を向いていると不意に目の前に差し出された缶ジュースに俺は目線をあげた。