六本木の一等地に建つ十階建てのオフィスビルの最上階。
それほど広くは無いけれど整然とデスクが並ぶ執務室で、数人の事務社員が電話応対に追われている。


慌ただしく、それでいてセオリー通りの応対をする声。
そして、人手のキャパを越えると、電話のベルが鳴り響き始める。


大変だなあ……。
なんて、まるで他人事みたいな感想だけど、私はパーテーションで仕切られたこの簡易応接スペースの向こう側の社員に同情せざるを得ない。
だって私がここに来た時から、ずっと電話が鳴り響いている。
そして数人の事務社員は、いつものルーチンワークに取り掛かることも出来ずに、ずっと電話応対にフル稼動なんだから。


そんな慌ただしい事務所の空気を感じながら、さっきから、私は一回り近く年の離れた男と黙りを決め込んでソファに向かい合わせて座っている。
二人の間を隔てる小さなローテーブルの上には、今日発売されたばかりの写真週刊誌が開いた状態で置いてある。


『深夜の密会! 望月舞子(23)、初の熱愛を激写! お相手は注目のイケメンモデル』


デカデカと、ゴテゴテのゴシック体の文字が踊る見出し。
白黒の写真はいくらかピントがずれていて、目を凝らしてじっくり見ないと被写体が誰かもわからないくらい不鮮明。
だけど贔屓目に見れば、ツンツンヘアでサングラスをかけた背の高い男が雑誌で大人気のイケメンモデル、光山塔賀(みつやまとうが)君で、俯きがちで肩下レングスのサラサラストレートヘアの女が女優の望月舞子(もちづきまいこ)、つまり私だと、なんとかわかる。

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芸能人  年の差  マネージャー  毒舌  キス  片想い  敬語 

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