前髪をピンで留めて、剥き出しの額にパタパタとはたかれるファンデーション。
アイブロウで眉を整えた後、閉じた瞼に施されるアイシャドウ。


「ちょっと目を開けて」


言われるがままに目を開けて、柏原さんと一緒に鏡を覗き込んだ。そうして、ここまでのメイクの途中経過を確認する。


このドラマの私の役所を考えても、明るい可愛らしいメイクにはならない。
この後はポスター撮影になるから、柏原さんの今日のチョイスは落ち着いたブラウン系のアイシャドウだった。


メイクの出来栄えに満足いったのか、柏原さんは、よしと呟くと、再び私に目を閉じさせる。


今度は指で目元を押さえたり引っ張ったりしながらアイラインを引いて、そしてマスカラを塗り付ける。
ほんのりオレンジのチークを頬骨辺りに塗して、最後にヌードカラーの口紅を引いて、メイクタイムは終わり。


「はい、お疲れ様」


そう言って肩に掛けていたケープを外すと、肩をポンと叩いて合図してくれる。
改めて目を開けて鏡を覗き込むと、完全版『しずか』がそこに佇んでいた。
物静かで『善人』ではない、ちょっとミステリアスな女性。
普段の私とはまるで正反対だけど、見た目だけはそれっぽい。


「ありがとう、柏原さん」


そうお礼を言ってから、私は丸椅子から立ちあがって気持ちを引き締めた。


ドラマの初回放送開始まで、後一ヵ月を切った。
制作発表でのマスコミの反応も上々だったらしく、テレビ情報誌なんかでも新春の注目作品として大きく取り上げられている。


主役二人のメインビジュアルポスターはもうあちこちの媒体で公開されているけれど、この機に更に宣伝強化することになって、私や他の主要キャストも含めた別ビジュアルのポスター撮影を行うことになったのだ。

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