会話が途切れたタイミングでほんの少し視線をずらすと、共演者達が監督と話しながら次のシーンのリハーサルをしていた。
私の出番はこの次の次まで無いから、まだしばらく時間に余裕がある。
この待ち時間を使って、撮影の邪魔にならない現場の片隅で、私は雑誌の取材を受けていた。


「それでは最後にお聞きしたいんですが……」


取材時間も後数分というところで、私の正面に座ったライターさんがゆっくり顔を上げて、改めて私と向き合った。


「望月さんはモデル出身ですが、女優としての活動を開始されて六年程になりますよね?
女優のお仕事をどう感じておられますか?」


にっこりと笑顔でそう聞かれて、私は一瞬目線を宙に彷徨わせた。
う~ん、と考えるように小さく唸ってから、もう一度リハーサルが行われている場に意識を向ける。
立ち位置やすれ違い方まで綿密に話し合うから、あのシーンを撮り終えるまでに、優に三十分はかかるだろう。


「……難しいです」


考えながらそう言って、そうして自分の発した言葉をもう一度考えた。


「モデルの仕事では、綺麗に撮ってもらうのがただ楽しかった。
でも演じる仕事を始めてみたら、綺麗なだけじゃいけなくて。
なんて言うんだろ……お人形が人間になるような感じ?」


自分でも言っていてよくわからないと思ったのに、ライターさんは興味深そうに頷いてくれる。
それに背中を押されるように、私は更に言葉を続けた。


「上辺だけじゃいけない。私の中身も全部曝け出さないといけなくて。
そういうのが今でも難しいって思うし、やっぱり恥ずかしさもあります」

「なるほど」


ふむふむ、と頷きながら、ライターさんは私の言葉をメモに取る。
そんな姿を横目に、私はやっぱり撮影を続ける共演者を意識していた。

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