局内に戻った途端、オレは頭の上からラモット班長の怒号を浴びた。班長はオレより頭ひとつ分背が高い。

「破壊するなと言っておいただろう! ロボットは人の命令を聞くんじゃなかったのか!? おまけに一般人所有のエアバイクまで壊しやがって。持ち主から苦情が来てんだぞ!」
「すみません」
「バグってないなら、なんであんなマネしたんだ!」
「シャスの身が危険にさらされていたからです」
「オレたち機動捜査班は、もとより身の危険は覚悟の上で任務に当たってるんだ。シャスだってそれは承知している。自分の身は自分で守れる腕はあるんだ。命令に背いてまでおまえが余計なことすんじゃねぇよ!」

 そう言われても、同じ状況になったら、オレはまた命令より人命を優先してしまうだろう。
 他人のバイクを断りもなく投げつけるなど、オレの意思ではなかったけれど、理由はなんとなくわかっている。
 黙って怒鳴られているオレを哀れんで、奥から人の良さそうなおっさんがニコニコしながら班長をなだめた。特務捜査二課の課長、デュアール=ミロンだ。

「まぁまぁ、ラモットくん。メモリは無事だったわけだし、彼も初仕事にしては頑張ってくれたんだから、そのくらいにしておいたらどうだね」
「しかし二課長、今後も命令に背くようなことがあるなら、班の統制がとれません。せめてプログラムを見直した方が……」
「その必要はありません」

 なおも言い募るラモット班長を遮るように、凛とした声が部屋に響いた。その場にいる者が一斉に声の主に注目する。
 通信司令室に詰めていたリズが戻ってきたらしい。
 リズはつかつかとそばまでやってきて、オレと班長の間に割って入った。小柄な彼女は両手を腰に当てて背筋を伸ばし、挑むように厳しい視線で班長を見上げる。

「シーナがあなたの命令に背いたのは、人命を最優先する絶対命令のせいです。プログラムのバグではありません」

 やっぱりそうか。
 確かにあの時のオレは人工知能に体の制御を支配されていた。
 他人のバイクを壊すのは、法に反する行為なので、それこそ絶対命令が働いて絶対にしないはずだ。けれどシャスの身の安全を確保することの方が優先順位が高い。


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