SweetS Time ~君は果実~
わたしばっかり食べているから怒っちゃったのかな……。

怖くなった理子が、座ったまま反射的にフローリングの上をずるずると後ろに下がる。すると、不敵な笑みを浮かべたままの一樹が、四つん這いになってゆっくり追いかけてきた。その姿はまるで、小動物を追い詰める猛獣のよう。

「な、なんで来るの?」

「なんで逃げるの?」

身の危険が迫っているような気がした、なんていえるような雰囲気じゃない。

「あの、なんとなく」

「へぇぇ」

硬い壁に背中があたって行き止まりだと気づく。近づいてきた一樹が理子の足を跨ぐ格好で止まった。かなりの至近距離で。

「………」

整った顔が真っ直ぐに理子を見つめている。まるで、心の奥まで見透かすような瞳で。
緊張から体が固まる。口の中はカラカラになった。
理子はなにもいえないまま、目のやり場に困ってうつむいた。

「………」

「……俺も食べたい」

思いもよらなかった発言に、至近距離のハンサムな一樹の顔を見上げる。

「一緒に食べようか」

「あ……うん」

にっと笑う一樹の笑顔にほだされ、その笑顔の裏の思惑に気づかないまま理子は頷いた。
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