詐欺師の恋
黒い噂

お正月番組はつまらない。


売れない芸人もここぞとばかりに出てくる。



雑煮とセットだから、仕方なく見ている感がある。




だけど。




「ふふふ…うふふふ…」




私は、そのつまらないテレビを前にしながら、湧き出てくる笑いを制すことが出来ない。




腕に抱いたクッションはぎゅうぎゅうと潰されてばかりいる。




「気持ち悪…さすがに妹と言えど、20代後半の女が元旦に不気味に笑ってるのは気持ち悪ぃぞ」




珍しく実家に帰省していた兄が、痛いものでも見るかのような目つきで私を見下ろす。




「なんとでも言って、お兄様」




今の私には、何のその。



何を言われようとも、私が喜びの余韻に浸るのを妨げることはできない。






「あー、寒い。鳥肌たった」




相手をしていても無駄だと悟った兄は、わざとらしく腕を擦りながら部屋を出て行く。




私はその後ろ姿を見ることもせずに、またうひひと声を立てて笑った。




だって、仕方ないでしょう。




中堀さんが、まさかの、告白。




夢みたい。



新年早々、一年の全ての運を使い切ってしまったんじゃないだろうか。
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