急アルの多い、花の金曜日。
その日も予想を裏切らずやってきた酔っ払いを診察していた。


「……なんだか、胸がドキドキする」

「入院時バイタルは?」

動悸を訴える患者に、看護師に確認する。
しかし、特に問題ない。
どれも、正常といわれる範囲内の数値。

「何か病気したことある?」

そう聞くと、ぶるぶると顔を横に振る。

「不整脈あるのかな?ちょっと触るよ」

そう言って彼女の手首を掴んだ。
少し早目だが、飲酒していることを考慮すると当然。
とくとくと、不整ないリズムが指先に伝わってくる。

「脈は大丈夫だそうけどな」

「あぁ、胸が苦しいっ」

すると、途端に胸を抑えて悶え始めた彼女に、急いで看護師に指示を出した。

「12誘導とろうか、準備して」

若い患者なだけに少し慌ててしまう。
そんな俺の顔をじーっと見て目を離さない彼女。

さっきまでの苦しがっていた顔はどうしたのか、ぽーと呆けるように見つめてくる。

「……何?」

「胸がきゅーっとするんです」

「うん」

「先生に見つめられたり触られたりすると、ドキドキが酷くなるんです。これはもしかして……」


12誘導を引っ張り出してきた看護師が顔色一つ変えず冷静に言う。


「恋煩いですね」

「……心電図いいや」

「はい」


これが彼女との出会いだった。

そして、これから、ひどい天然ボケで自由奔放な彼女に振り回される日々が待ち受けていようとは……。


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医者  溺愛  同棲  コメディ  年齢差 

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