奥様のお仕事
「え?私?」


鏡に映る私を見て 思わず声をあげた。


「この若さでこの完成度ですもの
これからどれだけ美しくなるのか楽しみです」


「お洒落とか全然わからなくて……
お化粧も初めてです」


「そういうところが 専務さんが
マリンさんを選んだところなんじゃないかしら」


いやいや
全然違うから・・・・・・


いちいち反応したくなるけど
本当に申し訳ない・・・・・・・・・・・


「実は 専務さんから
マリンさんのスタイリストお願いされたんです」


「スタイリスト?」


「もう こんなヤル気の出るお仕事
させていただけて幸せです」


「そうなんですか こちらこそ
何もわからないので 教えて下さい」


「専務婦人は いろいろ大変ですからね。
年の功と経験で 夫婦でご夫妻を支えられたら
こんな光栄なことはありません」


美由紀さんは 興奮したように早口で言うと頭を下げた。


「専務さんはおモテになるのにずっと
純愛を貫いて もう本当に感動です!!!」

純愛なんて……ワガママな人のシナリオに
すっかり騙されて 申し訳ない気分になった。
< 40 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop