奥様のお仕事
「マリンさん」


「ん?」


目を開けると佐伯さんがいた。

「あ あれ 私寝ちゃったんですね」


「気疲れしたでしょう。
うちの 会長と社長は気難しいですからね」


「あれ?浩一郎は?」
上手に呼び捨てにできた。


「若は先に荷物を持って部屋へ行きましたよ」


「ここって?」

これがマンションっていうやつ・・・・・・
佐伯さんに 促されて 自動ドアが開いたら

「うわ」

ここもまた広いホテルのような・・・・・・


「あ!!!」

エレベータの前に立った時 一枚の絵が飛び込んできた。


「これって!!!」


佐伯さんが微笑んだ。


「若の尊敬する大好きなアーティスト
マリンさんのおじいさまの作品です」


「じいちゃん・・・・・・」


いつもあたりまえに目にしていた祖父の絵だった。


「素敵」
改めて違うところで見ると 祖父の絵がどれだけ
繊細で美しい色使いなのか気づかされた。


「本当に素敵な絵ですよね」


涙が溢れて 流れた・・・・・・・・。


「じいちゃん………」
急に祖父に会いたくて仕方がなくなった。

「泣いてるんですか?」
佐伯さんが慌てている。
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