Love Butterfly
初恋

(1)

「かわいいなあ、京子」
隣でバイクをいじってる、崇大が、突然、言った。
「お前に、絶対、気、あるで」
そんなわけない。俺みたいなヤンキー、あんなええとこの子が、好きなわけない。
 崇大は、小学校からのツレで、ずっと俺らは悪ガキで、まあ、多少は、人に迷惑かけたりしたことも……あるかもしれんけど、でも、俺らはずっと、堂々としとった。影でイジメやったり、万引きしたり、弱い奴から金巻き上げたり、そんなことは、一度もしたことない。俺らの相手は、いつもオトナか、強いヤツで、二人でチーム作ったときも、俺らはそんなチームにだけはしたないって、二人で決めてた。

「ガキやんけ」
「そやなあ。制服着てへんかったら、小学生や、京子」
 あの夕立の日、俺は、京子を見て、びっくりした。真っ白の肌で、真っ黒のストレートの髪で、何より、ウルウルした大きな目で、こんな女が、この世におるんかっていうくらい、京子は、なんていうか、天使、みたいやった。俺の周りの女はみんな、派手な女ばっかりで、中一か中二で、もう、「女」になってるようなヤツばっかりで、そんな女に比べたら、ほんまに京子はおぼこくて、崇大の言う通り、小学生に見えるかもしれん。
「おにい、ご飯食べんで。あれ、たかにい、来とったん」
「おお、陽子。なんや、ちょっと見んうちに色っぽなっとるやんけ。男でもできたんか?」
「それ、セクハラ、ゆうねんで」
妹の陽子は、中三で、京子より一つ年上やけど、やっぱり、陽子と比べても、京子はおぼこく見える。
「たかにいもご飯食べてええで」
「お前が作ったんか」
「今日はおかんや」
「ほんなら、食べる」
「どういう意味や!」
いつもこの二人はこんな感じやけど、たぶん、好き同士や。小さいころから、崇大は陽子がいじめられたゆうたら、すぐ飛んで行って、年上やろうがなんやろうが、ケンカしに行っとった。
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