少しずつ、見えるミライ
あり得ないから、こんなこと。



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あれから、何だかんだと三週間が過ぎた。

朝からいる男子アルバイトは少ないし、何と言っても目立つから、今やすっかり彼はデパ地下内の有名人だ。

柔らかな物腰がウケるのか、ベテラン販売員のオバちゃんたちにも好かれ、いつの間にやら、彼は洋菓子売り場のアイドルと化していた。



彼の勤務は基本的には週に四日だけど、事務所の経営するダンススタジオでキッズスクールの講師をしている日以外は、曜日の変更にも応じてくれる。

早番も遅番も出来るからシフトにも入れ易いし、誰かが休むなら、もう一日入ることも可能。

販売計画を立てる私としては、本当に大助かりだ。



重いものは率先して運んでくれるし、面倒な仕事も頼む前にやってくれる。

優しいし、よく気が付くし、頭の回転が早いから機転も利く。

見た目の雰囲気もこの上ないくらい洋菓子売り場にマッチしているし、接客だって、超が付くくらい上手い。



個人的な事情は抜きにして、バイトとしては最高だ。

こんなに役に立つバイトは初めてだし、女性客が吸い寄せられるように集まるから、彼がいる日は微妙に売り上げも上がっている気がする。

彼の存在は、店にとっても、私にとっても、大きなプラスになっているのは間違いない。
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