強がりウサギの不器用な恋

「…悪かったな。」


バツが悪そうにしょんぼりと、社長が私に謝ってくる。


「やだ…謝らないでくださいよ。
私、もう社長のことは好きじゃないし、全然大丈夫なのに。
社長の家に行ったって、奥様を見たって、何とも思わないです。ましてや辛くなんてありません。」


今言ったことは、正直な気持ちだ。
社長を好きだった感情は、浄化させることができた。

でもそれは、あの人が居たからだ。


―――― 彼を、好きになったから。



「大丈夫です。
全部誤解が招いたことですから、すぐに海藤さんとは元に戻れますよ。」


私が励ますように言うと、社長は笑ってゆっくりと頷いた。



< 258 / 404 >

この作品をシェア

pagetop