【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!


この人を見ると、足がすくんでしまう。


お菓子屋の御使いは妹に代わりに行ってもらうようにしてたから、もう会うことなんてないと思ってたのに。


「なんや。挨拶もできんと御高く止まっとんのか」

「あ、いえ、あ」

「舞う事しかできんお嬢様がこんな店で働けるか」


冷たくそう言われたら、横で控えていたパートの方がクスクスと悪意を感じる笑いを溢した。

でも、――仕方ない。


「舞う事も満足にできない私です。どうぞお世話になります」

惨めで、――涙が溢れそうだった。
でも私の泣き場所はあの桜の木の下のみ。


こんな所では泣きたくない。

唇をぎゅっと結んで笑顔を張り付けた。
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