【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
高い鼻、長い手足、真っ直ぐ伸びた背筋に、私を簡単に見下ろす高身長。



和らげな物腰と口調に騙されそう……いや、流されそうになってしまう。



けれどこんな高価で私には不釣り合いなものはやはり頂けない。





「でも、私は貴方との賭けに勝ちました。一晩、貴方は私のモノですよね?」

「約束は守ります。お力になれないかもしれませんが」



「じゃぁ、私のモノならば、私の買った服と靴を着るのは至極当然のことですよね」



ふふ、と笑う。

その笑顔は優しそうで綺麗だけど、有無を言えないオーラがある。

賭けを持ち出されてしまうと、私は何も言えないんですけど。



「い、一日だけの為なのに、そんな」

「貴方はまだ、賭けの本当の意味に気付いていませんよね?」

「本当の、意味?」



途端にボンネットに当たる雨の音が大きくなった。何かを予兆するかのように、私の心に大きく、存在感を当ててくる。

デイビットさんの長い指が、私の前髪に触れた。



「私の運命を乗せた大事な賭けでした。――だから神様が味方したんですよ」
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