【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「あの、あんな夜遅くまでお仕事されてるんですね」
「ああ。まだまだ親父が未熟だ、半人前だ、うるさいからな。早く黙らせたい」
真っ直ぐに背筋を伸ばし、目の前をよそ見をせずに見る幹太さん。
怖いけど、人としては尊敬できる方だと思った。
「あんたは、俺が怖いのに、連絡してきてた」
(ばれてたのか)
「ばれない方がおかしいから」
冷たく短い言葉の中で幹太さんは鋭く突っ込みをいれていく。
「彼と約束を破りたくないんです。私、賭けに負けてしまって」
「イギリス大使館ってことは、この前の外人はイギリス人か。イギリス人って王女の子供の名前とかを国中が盛り上がって賭けたりするよな」
「そうなんですか?」
「ちなみに大使館はパスポートがないと入れないって聞いたけど」
「嘘!」
春月堂の駐車場に車を止めながら、幹太さんは冗談なのか真面目なのか分からない表情で淡々と話してくる。
パスポートなんて持ってないけれど、招待状はあるし、大丈夫なはず。
「着物だけ、脱いだらくれ。二階の母親の部屋に置いとくから」
「ありがとうございます!」