【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!

思い切り肩を叩かれた幹太さんは露骨に嫌な顔をしたけど、何か言いたそうな顔で黙る。

「でも良かった。私がこれからちょくちょく抜けるからさ。頑張ってね」

とうとう桔梗さんのお腹の赤ちゃんは臨月で、病院の診察も三日に一回になった。

まだ一ミリぐらいしか開いてない、とか、初産は予定日が遅れるとか、運動しなければだとか色々とあるらしいのだけど、桔梗さんは毎日笑って頑張っている。


「桔梗さんに心配かけないように頑張ります!」

「そうそう! その調子ってお腹張ってきた。いてててて」

桔梗さんがお腹を押さえると、すぐさま幹太さんが桔梗さんの腕を掴んだ。

「休憩室で休んでろ」

冷たく切り捨てるような言い方なのに、何だか労わるように聞こえてくる。

「大丈夫よ。立ってた方が楽だから」
「うるさい、来い」
短いやり取りで、そのまま二人は休憩室へ行ってしまった。
残されたのは、私との調理場の責任者である幹太さんのお父さんだけ。


「う――ん。桔梗ちゃんも綺麗なんだよなぁ」

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