誤解から始まる恋もある?
オーダーされたジュースを厨房の入口で待っていると、トレーを持った里沙がニコニコしながら戻ってきた。

私と里沙は同い年。出身村は違うけれど同じ大学の観光学部で、一年前からここで一緒にアルバイトをしている。

私たちはどうしてもこのホテルに入社したくてアルバイトをはじめ、入社試験を受けてふたりとも正社員として採用された。あと十日ほど経てば、東京での入社式、研修を経てフロントクラークに配属される予定なのだ。

アメリカ人の祖父の血を引いている里沙の髪は、艶やかな亜麻色。レストランの規則で結ばなければならず、くせが強くて束ねるのにひと苦労しながらポニーテールにしている。

肩甲骨のあたりまである私の黒髪は、左右の耳の横で三つ編みにしている。昔の女学生みたいだけど、これが面倒じゃなくていい。

中学一年生の妹、絵里奈は今朝も『お姉ちゃん、二十二歳なんだからもっと大人っぽい結び方できないの?』と笑っていた。

毎日こんなふうにやぼったい格好をしていて、あまり自分の容姿に自信はないけれど、目が二重で大きいところだけは気に入っている。

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