「ねぇ、アズ。今日の飲み会、ヤスも来てくれるんだって?」

終業後の女子トイレ。
緋衣とミチルは、洗面台に並んで向かっている。

「そうなの? 出張今日までだったよね。直帰って聞いてたけど、ミチル会ったんだ?」

「うん。さっきリフレッシュルームにいたよ」

「久し振りだよね。ヤスさんって部署の飲み会は出ても、同期会にはなかなか顔出さないから」

「同期っていっても年上だしね。自分が出ると気を遣わせると思って遠慮してるのかも」ミチルは、麺棒でアイラインのヨレを直しながら言う。

「兄貴肌だし、そんなことないんだけどね。まぁ、一部の男子は面白くないんだろうけど」

「一部っていうか、山崎でしょ。ヤス相手じゃ、面白くないのも分からなくはないけど」

「確かにいい男なのは分かるけど、最近また秘書課に手出したらしいって噂になってるじゃん?」

そういうところがちょっと苦手なんだよね、と緋衣が続ければ、ミチルは怪訝そうな顔をする。

「アズだって、毎回そんな話真に受けてる訳じゃないでしょ。そんなの、どうせ、ヤスに振られた腹癒せで吹聴してるんじゃないの? 私、ヤスって実は一途だと思うよ。長年付き合っている彼女がいるって話、前に本人から聞いたことあるし」

「そうなの? 初耳かも」

緋衣は覗いていたコンパクトを化粧ポーチに仕舞いながら、鏡越しにミチルを見る。