メランコリック
仕事を上がると、自由が丘の緑道を駅まで歩く。

駅の前に本屋に寄ろう。線路沿いのパン屋にも。
最寄り駅についたらコンビニでスープとサラダを買って帰ろう。

明日は遅番だから、今夜は少し長く本を読むつもりだ。

ふと、背後に聳え立つ職場を振り向く。

古めかしいファッションビルはライトアップも装飾も甲斐なく、お化け屋敷みたいに見えた。
怪物ばっかり棲んでいる。

大学を出て一年半、私はこの会社で定年を迎えられるだろうか。

なるべく、早いうちに本社勤務になりたい。
そしてできるだけ、静かな部署がいい。

お金をためて、暮らしていけるマンションでも買って。
そうして、誰とも大きく深く関わらず、穏やかに平凡に暮らしたい。
たったひとりで。

それが私の小さい頃からの夢だ。





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