メランコリック
私は12月の頭に本社の生産管理課に異動した。

本社は青山なので、通勤は少し遠くなったが、9時から17時半の勤務体制は悪くないと思う。定時で必ず帰れる部署であるのもいい。

オフィスはメインフロアとは別の階で小さな部屋に私の他に8人の社員。若手の多いこの会社の中で年嵩の男性ばかりだった。

仕事はオフィスワークそのもの。
各店舗の発注と、自社製品の生産管理、仕入れ商品の在庫管理。
完全な裏方だ。

各店舗とのやりとりはメインの営業部がやるので、私たちは回された書類をパソコン上で処理するだけ。

平穏だった。

もう無理矢理笑顔を作らなくていい。

やっと、望んだ場所が手に入った。ここで、静かに仕事を続け、時間を消費していけばいい。

相良駿吾の顔が浮かんだ。
相良の言葉が過ぎった。

私は何にも持っていないし、これからも持つ気はない。

だから、彼も早く私なんかへの興味は忘れるべきだ。





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