メランコリック
「気にしないで」


「気にする。また居心地悪くなるんじゃないか?」


「もともと、職場に居心地なんて求めてないもん」


相良が顔をしかめた。


「そーいう、夢も希望もないところがムカつくんだけど」


相良は私の厭世的な思考が嫌いなのだ。嫌いなら放っておいてほしいのに、彼はとことん関わるのをやめようとしない。むしろ、改善させたいとでも思っているようだ。

きみは私のヒーローじゃない。

そう言ってやりたい。
でも、物凄く自惚れた発言にも思えてそんなことは口にできない。


「帰ろう」


私は促して先に歩き出した。


「心配してくれてありがとう」


私の発言が嬉しかったようで、相良は更に調子にのったことを返す。


「なんかされたら、言え。俺がおまえひとりなら守るから」


やっぱりヒーローきどりだ。
でも、その素直な子どもじみた愛情は、少しだけ嬉しかった。





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