こんぺいとう
それからすぐの事だった。
雄治の元へ赤紙が届いた。
覚悟をしていた事といえ、文子に冷静さを保つ事なんて出来ない。雄治の前で取り乱し、大声で泣いた。
「行かないでください…あなたが死んでしまったら、私は生きてはいけません。」

雄治は文子を抱きしめると、
「必ず帰ってくる。必ず…」
声にならない声で雄治は泣いた。
「どんなに離れていようと、俺は文子を思い続けよう。文子を側に感じて生きよう。文子が悲しみを感じた時、三人で一緒に歩いた河原に行きなさい。
そこで俺を感じて欲しい。」


戦地へと旅立つ日、文子は雄治に僅かなコンペイトウを手渡した。「御武運お祈りしております…」

無情にも汽車が出発の合図を鳴らす。
汽車に乗り込んだ雄治を、いつまでもいつまでも文子は見ていた。再び会える事を信じて…

それから一ヶ月後、雄治の弟も戦地へと旅立って行った。
文子の大切な人達は、みんないなくなってしまった…
河原の桜に、
「いつか、またみんなで笑って過ごせる?平和な日々は帰ってくる?雄治さんに会いたい…」
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