無垢な瞳

その日は日曜日だった。

体調のすぐれない母に代わって買い物をした帰り道、どこからともなくピアノの音色が聞こえてきた。



「コウだ!」

すぐにわかった。

このピアノはコウが弾いている。

ケンとコウはほぼ毎日一緒にいる。

コウのピアノの音がわからないわけがなかった。

ケンは音の出所をすぐにつきとめた。



「ここだ」

路地を少し入ったところに古い平屋の家が見えた。

「渡瀬」と表札が書かれている。

まちがいない、コウの家だ。



僕は垣根の間から、家の中をのぞいてみた。

縁側に面した和室にピアノが置かれ、その前にコウが座っていた。
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