冷血上司の恋愛論
ライバルには存在感を示す
「もしもし、」


「何かあった?」


「藤井の家何処ですか?」


「万利乃は?」


専務が電話にすぐに出た。俺のスマホからの電話にもかかわらず。それは、藤井からの電話を待っていた証。そして、万利乃と呼び捨てにする二人の関係に嫉妬している俺がいる。


チッと漏れてしまった舌打ちに、電話の向こうで笑う専務。


苛つかないわけがない。だが、それを出しては俺の負けのような気がする。


「飲み会で相当部長に飲まされてましたからね。今、タクシーの中ですが、寝てしまって」


「へぇー、そう。どうせ、万利乃が子供扱いしたとかで俺に当て付けな行動をとったんでしょ!」


すげーな。そこまで藤井の事を理解しているとは。


「それで、藤井を何処に送ればいいですか?」


「んー、いいよ」


「え?」


「連れて帰っていいよ」


ハハハと笑う専務の意図がわからない。


「えっと……」


「じゃあ、ここからは専務と部下じゃなくて、話そうか。あの日みたいに」


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