スセリの花冠
「もしかして今宵は、隊長のアクヤへ連れていくのですか?」

「城に戻ったら王に特別に許可を頂くのですか?」

ディアランはハエのようにうるさい部下達を見回すとフッと笑った。

「アイセだ。この娘はアイセ。当分の間、俺が面倒を見ようと思ってるんだ。みんな、よろしく頼む」

それを聞いた部下達は更に騒ぎ立てた。

「おおー!」

「ディアラン様は手が早いからなあ!」

……え?

その言葉に愛世の鼓動が跳ね上がった。

ち、ちょっと待って、面倒をみてくれるのは有難いけど……手が早いって、それはつまり……。

意識をするとたちまち背後にディアランの気配を感じ、愛世はどぎまぎして振り返った。

途端、慣れない馬上のために体勢を崩す。

「あっ……」

「おっと。危ないよ」

腕一本でディアランに抱きしめられ、愛世は彼の胸に密着して凍りついた。

「きゃあっ!」

「見せつけないでくださいよ、ディアラン様」

「いいなあ、ディアラン様!」

叫ぶ愛世を腕に抱くディアランと、それを見て更に囃し立てる近衛兵達。

恥ずかしくて……もうだめ、倒れそう。

「そんなに固くならないで」

顔を赤らめてギュッと眼を閉じた愛世を見て、ディアランはクスリと笑った。
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