躊躇いと戸惑いの中で


裏口から外に出ると、河野がよく使う社用車と、もう一台の車が残っていた。

聡太は、河野の車にチラリと視線をやったあとその横を通り過ぎ、壁際に設置されている自販機のそばへと歩いて行く。

「沙穂、何か飲む?」

誰もいないからか、彼が二人でいるときのように名前で呼んだ。
私は、誰かが来たりして、その呼び名が聞かれてしまわないかとドキドキしてしまう。

「私は大丈夫。それより、どしたの?」

聡太は、自販機に並ぶ飲料水を一通り眺めてから、何故か溜息をこぼした。

「飲みたいのがないや」

そのいい方は、端からジュースを買う気などなかったように感じ取れた。

聡太は自販機に背を向けると、すぐそばに立つ私の顔をじっと見る。
その顔に、何? と問いかけようとしたところで聡太が口を開いた。

「今日は、河野さんと二人で出かけるんだよね?」

なんでもないみたいな顔をして、聡太が静かに訊いてきた。

“直ぐに来て”なんてメッセージしてきたけれど、本当のところは河野との事が訊きたかったんだね。
とにかく、何かトラブルじゃなくてよかったとほっとする。

「何かあったのかと思ったよ」

安堵する私へ、聡太が優しい顔をする。

「心配してくれたんだ、ありがとう」
「直ぐ来てなんて言うんだもの。心配するよ」
「沙穂は、優しいよね」

聡太が上目遣いに、意味深な言い方をした。


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