冷徹執事様はCEO!?
「大して絡んでなかったと思うわ」

「首締めた上にタックルまでかましておいて、よくまあ、白々しく言えるものですね。恐ろしいお方だ」

田中は無表情のまま言う。

「貴方だって、人の胸揉んでおいて『覚えていません』はないでしょう。潜在意識ではお相手したかったんじゃないのー?」

私は冷やかすようにニヤリと笑った。

「違います。男としての本能です。其処に胸があったから揉んだ。それだけの事です」

「道端の石ころのようないいぶりね」

「滅相もない」

田中はいつも通り飄々とした態度だ。

しかしいつもはキッチリ整えられた髪は寝起きで乱れているので様にならない。

すきだらけの田中…なんかカワイイ…。

「寝癖たってるよ」

私は田中の髪をそっと手で撫でつけた。硬めの髪質だがストレートでサラサラしている。

仄かに同じシャンプーの香りがした。

「我儘を聞いてくれてありがとね」

私は小首を傾げて、にっこりと笑う。

「… またいつでもどうぞ」

田中は微かに頬を赤く染め、視線を反らした。照れてるようだ。

「じゃあ、今日の朝食はパンケーキがいいなあ」

「畏まりました。燁子様」

田中はすぐにいつもの能面フェイスに戻っていた。

だけど、同じベッドで一夜を共にして---と言ってもやましいことなんてなーんもなかったけど---田中と私の関係はちょっとだけ改善されたようである。
< 102 / 277 >

この作品をシェア

pagetop