冷徹執事様はCEO!?
「田中も私を騙してたの?」

「騙したつもりはありません。私に近づいて来たのは燁子さまです」

…何も言えねえ…。

私は俯いて黙り込む。

「それに使用人としての優しさを勘違いしていたのも燁子さまです」

時折見せる笑顔も、頭を撫でてくれた手も、全て使用人としての優しさだったんだ。

思い上がっていた自分が恥ずかしくなる。

「じゃあ、キスは?」

田中は一瞬ギョっとした表情を浮かべたものの、直ぐにポーカーフェースに戻る。

「お…オプショナル?」

何故か田中は疑問形だ。

「そんなオプショナルなんていらねーよ!」

即座に私は突っ込んだ。

「満足いただいているようにお見受けしましたけど」

田中は唇の片端しを上げて底意地悪そうに笑った。執事口調がまたムカつく。

「とにかく、貴方と結婚するつもりはありませんから!」

私は捨て台詞を吐き、タクシーを拾おうと大通りに出る。

「燁子!どこ行くんだよ!」

田中が後から追いかけて来た。
< 151 / 277 >

この作品をシェア

pagetop