「ついて来ないで!」

タクシーを拾おうと大通りに出て手を上げるが、こんな時に限ってなかなかつかまらない。

「燁子様、落ち着いて話を聞いてください」

言い訳なんて聞きたくない。田中は私を騙していた。

タクシーがなかなか捕まえられず、痺れを切らした私は諦めて地下鉄の駅に向かって歩きだす。

しかし、田中のついてくる気配はなかった。

な、何よ… 、随分あっさりと引きさがるのね。

肩透かしを食らった気分だが、様子を見るために振り返るのも癪なので、速足で歩き続ける。

後ろからクラクションを鳴らされ、一台のタクシーが横付けされた。

後部座席のパワーウィンドウが開き、中から田中が顔を出す。

「地下鉄で帰るのですか」私に向かって声を掛ける。

「そうよ、悪い?」

私は田中に冷ややかな視線を向ける。

田中と一緒に帰るくらいなら、地下鉄で帰った方がマシだ。

「… その格好で?」

冷静なツッコミで私はフト我に返った。

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