イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
その後なんだかんだと話して、二時間弱が過ぎた頃、祥太の携帯が鳴った。
どうやら友達からで、今飲んでるから来いっていうお誘いのようで。
飲みじゃなくても、学生の頃から、友達の多い祥太はこういう事はしょっちゅうで、しかも私よりもそっちを優先するのも毎度の事だ。
それは付き合い初めこそ優先順位はどうなってるのとツッコみたくなったりもしたけれど、今は特に何かを思ったりはしない。
誘われたら断れない性分だから、仕方がない事なんだろうなと悟ったのはもうずいぶん前の事。
そして、そんな祥太が私には“ごめんっ!”って言って断るのは、甘えられてる証拠なのかなと気づいたのも同じ頃だった気がする。
そんな甘え方どうなんだとも思わなくもないけど、こればかりは仕方ない。
だったらせめて、私の前ではのびのびしていてくれたら、なんて……自己犠牲みたいな事を考え始めたのはいつ頃だったか。
じゃあお開きにするか、とお店を出て、祥太と別れようとしたところで、腕を掴まれた。
風間と並んで歩き出そうとしていたところだったから、急に手首を掴んできた祥太に驚きながら「何?」と聞く。
驚いたのは、急だったからじゃない。
触れられた事に対してだ。
浮気されてしばらくの間はいつも、どんな形にせよ祥太に触られる事に抵抗があるから。
もちろんそんな私の気持ちには気づいていない祥太は、眩しいほどの笑顔で言う。