イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―



受付嬢は、お客様に狙われやすいだとかセクハラを受けやすいだとか。
そんな話もたまに聞くけれど、うちの受付は他と比べてちょっと違うからそういった話もそんなに当てはまらないと思う。

というのも、受付と営業店が同じフロア内にあるから、セクハラしようにも声を掛けようにも人目があるし筒抜けだ。
それは他のお客様だったり、店内にいつもひとりはいる営業だったり。

それでも、声をかけてくるお客様や、仕事の取引先担当なんかはいるもので。
そういうのを目の当たりにすると、営業スマイルを忘れてついつい冷たい視線を送りたくなってしまう。

さっき帰ったお客様が使っていたカップやらを片づけるためにフロアのテーブルにいる村田さん。
そんな彼女に、取引先の三田さんがめげずに話しかける様子を見ながら、今日は一段としつこいなと思う。
村田さんの憎悪オーラがここまで及びそうだ。

私の冷たい視線に気づいたのか、しつこく村田さんに話しかけていたYMタイヤの三田さんが受付に歩いてくる。
「いやー、村田さんは手厳しいなー」と苦笑いを浮かべながら。

「この間から食事にでもってずっと誘ってるのに今日も振られちゃったよー」
「村田さんを本気で落としたいなら性別変えないと無理ですよ」
「へー。立花さんって冗談言う人なんだ。意外」

別に冗談のつもりもなかったけど、そんなにムキになって否定する事でもないと会話を終了させる。


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