地図に無いパン屋

昼飯→パン→trans

キーンコーンカーンコーン♬~

下校のチャイムと共に速斗が近付いて来る。
〈尚葵?今日はホント最高だったな笑 あんなに遅れたの今まで一番だろ〉

また馬鹿にしに来た。
『またかよ…朝にもさんざん話しただろ?近道しようとしたら道に迷ったんだ』
パン屋の事を話しても良かったけど、速斗が首突っ込むとロクな事にならないから余計な事は言わない様にとテキトーに嘘をついた。

〈ったく、お前いくつだよ?笑 っか、近道使おうって思うぐらいなら少しは真面目に起きろっての〉
速斗は色んな事にルーズだけど、時間だけはやたら真面目。
中学の頃から一度だって遅刻とは縁が無い。

『とりあえず担任から絞られんの懲りたし、明日から可能な限り起きられる様にするよ』
テキトーにあしらって、帰り支度を始めた。
部活は面倒だからやってないし、バイトも興味無いからやらない。
真っ直ぐ帰って、テレビ見ながらケータイ触ってるのが一番楽でいい。
帰り支度を終わらせて、いつもの様に速斗と途中まで帰る。

〈んじゃ、尚葵!バイトあるし、俺はここで!明日は遅刻すんなよ笑笑〉
速斗は高校1年の夏休み…去年の夏休みから駅の飲食店でバイトしてる。
何でも金を貯めて、彼女が出来たら死ぬ程デートするとか意気込んでるみたいだけど…理想高いから無理だろうな。

速斗と別れるのは朝も通った商店街の出入口。
俺はそこを抜けて帰るんだけど、、パン屋が気になる。朝、偶然見つけたパン屋。
でも、朝も夕方も1日に2回も顔出していいのかなって思った。それに何よりも、用が無い。
俺はパン屋の事を気に掛けつつも足早に自宅に帰った。

『ただいま』
親はまだ帰って来ない。帰りは夜9時頃。
着ていた制服の上着を脱いで、鞄と一緒にリビングのソファーに投げる。
その足で冷蔵庫に向かって、テキトーな食材を取り出してキッチンでの夕飯作り。

いつもの事。
中学に入ってからは自分でやれるだろと、夕飯作りをやらされる様になった。
勿論、自分のだけだけど…
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