君影草~夜香花閑話~
第二章
 その日の夕餉は、あきはほとんど喉を通らなかった。
 捨吉は特に変わりなく皆の相手をし、帰ってきた真砂と、何やら話をしている。

「あき、どうしたのじゃ? 食欲がないのか?」

 中の長老が、気付いて言う。

「何やら顔も赤いぞ? 風邪か?」

「あ、いいえ。あの、大丈夫です」

 早々に床に入れられては堪らない。
 慌ててあきは、ぶんぶんと首を振った。

 そういえば、いざ事に及んだときにお腹が鳴ったら一大事だ、と思い、あきはそそくさと今日の夕餉である雉鍋を椀に入れた。
 
 捨吉があきを呼び出したのは、真砂の傍にいたあの女の子に関する話をしてくれるからだ、とはわかっているが、それでも夜に二人で会うのだ。
 それはそれとして、本当に話だけで終わるとも思えない。

 いろいろ考えつつ椀を啜っていると、部屋の隅で捨吉と話をしていた真砂が、顔を上げた。

「あき」

 真砂に名を呼ばれることなどないため、必要以上に驚いたあきが、危うく椀を落としそうになる。
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