「朱里さんが飲んでて俺だけジュースとかお茶ってのはないですよ」

「どういう意味…?」

「一緒に楽しみたいから…」

中山はまるで子供のように拗ねた声を出し、顔は不満そうだ。

「それは飲めるようになってからでもいいよ。言ってくれれば私もジュースにしたよ」

「気を遣わせたくなかったから」

「気なんて遣ってないよ」

「朱里さん気遣ってるよ。さっきも俺にお金払わせなかったし」

「それは…この間出してもらったから」

「違うよ。俺のことまだ子供扱いしてるんだよ」

朱里はだんだん怒りが湧いてきた。

「子供扱いなんてしてないから」

「………」

中山は今度は不貞腐れたような、困ったような顔をしていた。

「私、中山くんはそういうとこきちんと言ってくれると思ってた」

「俺そんなに真面目じゃないよ」

そう言いきった中山の口調はいつもと違って冷たかった。朱里はこんな中山を初めて見た。

「………」

「………」

沈黙が苦痛だと感じたのは久しぶりだった。





「今日はもう遅いから駅まで送ります」

中山は朱里の前を歩き出す。行きと違い、帰りは手を繋がなかった。
不機嫌なオーラを出した背中を見ながら朱里は何度も言葉をかけようと思ったが、朱里の歩くペースなど考えず早足で歩く中山に話しかけることは躊躇われた。

改札の前まで来ると中山と別れた。
手を振って別れるタイミングのはずが、中山は硬い表情で

「おやすみなさい」

と言っただけだった。
ホームに入る前に振り返るともう中山の姿はない。

最初は楽しく食事をしていたはずなのに、何をどう間違えてしまったのだろう…

朱里は泣きそうになるのを堪えて電車に乗った。





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