昨夜中山にLINEを送った。

『会って話がしたいけど、時間ありますか?』

既読にはなったが返信がなかった。
このまま中山と別れるかもしれないと覚悟して、避けていたカフェの前に立った。
まるでストーカーみたいだと思われるかもしれないが、朱里は中山の姿を見たかった。

少し離れた場所からでも中山が店内にいるのが分かった。
テーブルを拭いて回っているのか店内を歩き回っていた。
そのお陰で朱里が外にいることに気づいていない。

お店に来たものの、中山に何を言えばいいのか整理できないでいた。
カフェの前に立っているだけでは何も進展しないのは分かっているが、中に入ることもできない。

迷っているうちに中山がカウンター内に戻り、前を向いた。
改札の前に立つ朱里と目が合った。
中山の目が見開かれてしばらく見つめ合ったあと、中山は朱里から目を逸らした。
チラチラと朱里を見ることはあっても、今までのように手を振ってくれることはなかった。
その仕草で理解した。

もういつものように手を振りたくはないんだ。

朱里は堪らずその場を離れた。










朱里が家の鍵を開け玄関に入り靴を脱いだその時、カバンが震えた。
スマホを取り出し画面を見ると、中山からの着信だった。
一瞬迷ったが電話に出た。

「もしもし」

『朱里さん…』

数日振りに聞く中山の声だった。

『今日ごめんね、来てくれたのに』

「うん…」

『今から会える?』

「今?」

『朱里さんちの駅まで行くから、待ってて』

電話の向こうから駅内のアナウンスが聞こえた。
カフェの駅だ。今バイトが終わったのだろう。

『駅に着いたらまた連絡するから』

「うん。待ってる…」

通話を終えると朱里は再び靴を履いて外に出た。

中山に謝ろう。
楽しい時間を台無しにしてしまった。
もしまだ付き合っていてくれるなら、朱里の価値観を押し付けずに気持ちを分かってもらいたい。





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