「下まで一緒に運びますから」

中身を段ボールに入れながら男の子に話しかける。

「すいません」

段ボールを抱えながら、男の子の後ろについて階段を下りた。



「ここまでで大丈夫ですから」

階段を下りて少し進むと男の子が振り向く。

「ありがとうございました。恐れ入ります」

朱里は持っていた段ボールを男の子の段ボールの上に載せた。

「いえ…それじゃあ」

朱里は再び階段を上ろうと歩き出したとき

「あの!」

呼び止められて振り向いた。
男の子は段ボールを地面に置いて、制服のエプロンの裾をギュッと握り締めている。

「あの、あの…」

「何か?」

「……何かお礼を…」

朱里は目を見開く。

「いや、いいですそんな…」

「お礼がしたいです!」

「いやほんとに…いいですから…」

朱里は困った。
別にどうってことはない、ちょっと手伝っただけだ。

「俺、中山っていいます。よければ…ご飯でも行きませんか?」

暗くてよく見えなかったが、中山が顔を真っ赤にしているのが分かった。

「あの…」

朱里は更に困った。
中山が勇気を振り絞ってくれているのが分かったが、正直怖かった。
いきなりの誘いの意図がわからない。

しばらく困惑して黙っていると

「すいません、いきなり…困りますよね」

中山は咳払いを一つすると

「本当にありがとうございました。またお店に来てください…」

と段ボールを抱え、事務所らしき建物に慌てて入っていった。

朱里は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
もっといい対応が出来たはずなのに、突然の出来事に頭が真っ白になってしまった。
ぼーっとしたまま階段を上った。

ふと腕時計を見ると、針は22時を示していた。





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