Sugar&Milk
「どうぞ座って」
部屋の真ん中に置かれたローテーブルの前に朱里さんを促す。
テーブルの中央にケーキを出した。『2』と『0』の形をしたロウソクをケーキに刺す。
「歌とか歌う?」
朱里さんの提案に「いや、それは恥ずかしいのでいいです」と照れた。
大好きな人に祝ってもらえるだけでも照れるのにバースデーソングを歌われたら、それこそ子供扱いされているような気になる。
「誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
ロウソクの火を吹き消し、ケーキを4等分する。
「二人だとやっぱり多いですね」
「夜にこんな大きなケーキ食べたら太りそう」
「朱里さんは大丈夫ですよ」
細いから大丈夫だというつもりで言ったのに、朱里さんは「日々油断できないの」と言いながら首を振る。
ある程度ケーキを食べていくと「紅茶淹れますよ。コーヒーもありますけどどっちにします?」と聞いて立ち上がる。
「じゃあ紅茶で」
予想していた通りの答えに「はい」と微笑んで牛乳を温める。コンロに火をつけてカチャカチャとカップを出す。
朱里さんはいつも店では紅茶を飲む。ただのミルクティーよりはきっとロイヤルミルクティーが好きだろう。ケーキがあるから砂糖は控えめで。
カップをテーブルに置くと「ありがとう。わざわざ牛乳温めてくれたの?」と聞かれた。
「はい。その方が好みだと思ったんで。朱里さんってうちのお店でロイヤル飲まないですよね。ただのミルクティーよりロイヤルの方が好きそうなのに」
「だってあのカフェってロイヤル高いんだもん。たまにしか飲めない」
「あー、確かにうちのは特別に仕込みがあるんで高いですね」