Sugar&Milk

「営業2課の(たちばな)です。お疲れ様です。帰社時間遅くなるのでホワイトボード書き換えておいていただけると助かります」

電話を受けてくれた同僚にお願いして通話を終えるとカフェに顔を向けた。ガラス張りの店の入り口にはポスターが貼られ、カラフルなケーキの写真が並ぶ。定番のモンブランが特別美味しそうに見えた。
このカフェは会社近くの駅構内にあることとカウンター席にコンセントがあり、パソコンやスマートフォンを充電できることが便利でたまに利用する。打ち合わせで使うことも多かった。カフェにノートパソコンを持ち込んで仕事をするというのはオシャレな会社員ぽくて、たまにやると気分が良くて仕事もはかどるのだ。

外から店内の空きを確認すると、この間階段で荷物を拾ってあげたアルバイトの男の子がいることに気がついた。今まで彼をただの店員としか認識していなかったけれど向こうは私の顔を覚えているようだし、今入ったら話しかけられたりするのかな?
ほんの少し入るのを躊躇ったけれど、ぐうぅぅっとお腹が鳴った。お昼を早めに済ませてしまったから胃は食べ物を欲しがっている。しょうがない、と自動ドアを開けて店内に入った。

「いらっしゃいませー……あ!」

私と目が合った男の子が笑顔を向けてくる。

「こんにちは」

「どうも……」

無邪気な笑顔に緊張してくる。男の子から視線を逸らして先に席を取りレジの前に行く。レジを担当している女性店員は私と男の子を不思議そうに見てくる。ここには何度か来たことがあるけれど、今思うと店員の顔までは意識していなかった。今日は目の前にいる学生らしき女の子と、その横で私に笑顔を向けるこの男の子の二人だけのようだ。

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