Sugar&Milk
「もし僕に彼女ができても山本くんには知られたくないよ」
武藤くんが嫌そうな顔で言うと山本は「武藤の彼女めっちゃ興味ある」と面白そうな顔をする。
「だから嫌なんだよ」
「私は山本の彼女になる人に同情する」
私と武藤くんは山本に呆れた視線を向ける。
しばらくして先ほどのレジの女の子が私の頼んだ海老アボカドサンドと、山本と武藤くんの頼んだBLTサンドを持って席の横に立った。
「番号札2番でお待ちのお客様」
「あ、はい私が海老です」
「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ」
店員の女の子はトレーの上にそれぞれお皿を置くと、私の顔を一瞬見てカウンターに戻っていった。その視線が気になって、やっぱりこの子が苦手だと思ってしまう。
「なぁ橘、彼氏って店の他のスタッフの子たちに付き合ってること言ってるの?」
「それは言ってないと思うけど……堂々と言うようなことでもないし。一応私は客だからさ、あの子の印象が悪くなりそうだし」
「そう……」
「どうして?」
「んー……今ホットサンド持ってきた女の子がさっきから橘をチラチラ見てるからさ。付き合ってること知ってるのかなと思って」
山本の指摘に私はカウンターを見た。今現在瑛太くんを入れて三人いる店員は皆忙しそうにカウンター内で動き回っている。今はあの子からの視線は感じない。
「気のせいじゃない?」
「そっか……」
このカフェは瑛太くんと年が近い子が多く働いている。憧れる子が多そうなカフェでのバイト。きっと職場恋愛もあるんだろうな。瑛太くんが恋愛対象になりそうな女の子がここにはたくさんいる。今まで考えもしなかった不安が生まれた。
「橘の彼氏に今の女の子が未成年か聞いといてよ」
「え?」
「今ホットサンド運んできてくれた子、未成年だと手出せないから」