Sugar&Milk

「じゃあ復縁の可能性もあったりして―」

誰かの言葉に私はレモンサワーで咽そうになる。久々に会った元カレと復縁なんてあるわけがない。なんてことを言うのだと怒りすら湧く。浩輔は「もうこの話やめよーぜ。みんなの近況聞かせてよ」と話題を変えた。
一気に居心地の悪い空間になる。仲の良い女子だけで飲みたかったのに、誰それが結婚しそうだとか子供を産んだとか、私には無縁な話で入っていけない。

瑛太くん今頃何しているんだろう。こっちじゃなくて彼氏のところに行けばよかったかも……。

「朱里はビール飲めるようになった?」

「え?」

突然浩輔に話しかけられて戸惑う。

「前はビール苦くて飲めないって言ってたじゃん? もう飲める?」

「ああ……まだ苦手。今でもワインとかサワーばっかり」

ビールがそんなに飲めない瑛太くんに合わせて私もワインが中心だ。

「そっか。変わってないんだ」

浩輔は途中参加のくせに酔い始めたのかニコニコと私を見つめる。私もそんな浩輔を見つめ返すと目を逸らされた。

大学での時間のほとんどは浩輔がそばにいた。この人のことが大好きだったのは確かなのに、今では何の感情も湧かない。半分一緒に住んでいたようなものだし、何度も体を繋げた。それが不思議だとさえ思う。私の過去だけは知っていても、今現在どこに住んで誰と付き合っているのかお互い知らない。

「何浩輔を見てんだよ朱里」

そう声をかけてきたのは浩輔と一番仲の良かった男だ。

「まだ浩輔に未練あるとか?」

この言葉に盛り上がる周りに対して私は思わず「は?」と冷たい声を向けてしまった。

< 60 / 148 >

この作品をシェア

pagetop