Sugar&Milk
瑛太くんが持ってきたケーキはイチゴがふんだんに盛られて売れ残りなのが信じられないほど豪華で見た目がいい。今は日付が変わる直前ということも、カロリーのことなども忘れて頬張る。フォークを持つ手にはお揃いで買った指輪が光る。
「指輪、つけてくれてて嬉しい。バイト中はつけられないけど、それ以外は俺もずっとつけてる」
「気に入ってるんだ。お風呂入った後に付け直してそのまま寝ちゃうときもあるよ」
「朱里さん」
「ん?」
「俺ばっかりが好きでごめんね」
突然謝られたことに驚いて瑛太くんの顔を見た。
「俺ばっかり朱里さんに甘えてるから」
真顔だからどういう意図でこの言葉を言ったのかが分からない。
「そんなことないよ。私だって甘えてるんだから」
「無理してない?」
「…………」
うまくフォローしたいのに言葉が出ない。無理をしているわけじゃないけれど、瑛太くんと会う時間を作ることで少なからず疲れている。
「してないよ、大丈夫」
本音は隠した方がいいだろう、と嘘をついた。うまく隠したつもりなのに瑛太くんは不安そうになる。
「朱里さんが甘えたいときはちゃんと言ってね……」
気のせいじゃなく落ち込んだ暗い声になるから、私は横に座る瑛太くんの肩に頭を載せた。
「本音を言ってもいい?」
「うん……」
「瑛太くんと会うのが疲れちゃうときもあるんだ」
肩がピクリと動いたけれど気づかないふりをして言葉を続ける。
「毎日瑛太くんのこと考えるし、会えたら嬉しいよ。でも会う時間を作ろうとして退勤時間を意識したり、瑛太くんのバイトの時間気にしたりすると仕事自体に集中できないこともあって……」