Sugar&Milk
浩輔と付き合っていた頃がそうだった。仕事も浩輔との時間も大事だ。でもうまく両立できるほど器用じゃない。私の仕事はクライアントに左右されることもあるから。
「お泊りも疲れる?」
瑛太くんが小さな声で聞いた。
「一緒にいられるだけでも十分だし、もちろんお泊りも楽しいよ。だけどやっぱり次の日を気にしちゃう」
「負担かけてごめんなさい……」
「瑛太くんにも負担に思ってほしくない」
「俺は負担じゃないよ」
「授業ちゃんと出てる? 寝坊したりしてない?」
「うん……ギリギリなことはあるけど寝坊はないよ」
「瑛太くんには今しか経験できない時間がある。それも大事にしてほしい」
貴重な時間を私にばかり割かないでほしい。同じ過去を繰り返したくないから、お互いの生活で無理をしないようにしたい。
「俺は深いこと考えないで今が楽しければいいやって思ってたけど、朱里さんと出会ってから将来をちゃんと考えなきゃなって思うことも増えてきたんだ」
瑛太くんが私の頭を撫でた。そんなことを初めてされたから胸がぎゅっと疼く。
「本当に負担じゃないよ。無理なんてしてない。今の俺には朱里さんとの時間が人生の中でも大事な時間だって確信してる」
頭を撫でながら私の髪にキスをする。
「今後俺から会いたいっていうのは控えるね」
「うん……」
「でも朱里さんの来たいと思ったときに俺の家に来て」
「え?」
「朱里さんに合鍵渡す」
驚いて体を起こして瑛太くんと向かい合う。
「朱里さんの都合のいい時に来れるし、来ないときは俺もバイトとかレポートに集中するし。もうすぐ就活も始まるからね」
「でも……私がもらっていいの?」