Sugar&Milk




今夜も会社を出るのが22時を過ぎてしまい溜め息をつく。あともう少しで今の仕事が終わる。そうしたら残業漬けの毎日が少しは楽になるはず。せめて事務処理をしてくれる社員がいたら少しは違うのに。

駅のホームへ行くと電光掲示板はあと数分で電車が来ることを示している。ほんの少しの間だけでも座りたくなってベンチに近づくと、先に座っている男性を見て思わず「あ!」と声を上げてしまう。そこに座っていたのはカフェ店員の中山くんだった。

「あ! うわっ、マジで会えた……」

立ち上がった中山くんは私を見て焦ったような嬉しがっているような複雑な顔をする。もしかして待ち伏せされていたのかと身構えてしまう。

「私がここに来るって知ってたんですか?」

職場がこの近くというのは察したかもしれないけれど、この時間にここに来るとは言っていないのに。

「待ってたわけじゃないです! そういうストーカー的なのじゃなくて偶然この時間にいて……」

中山くんは焦って手をブンブンと振る。

「俺今バイト終わったとこで……それで、お姉さんに会えるかなって……」

「え、やっぱ私を待ってたの?」

「はい……あ、いえ、そういうわけじゃ……」

中山くんは更に激しく手を振って否定する。

「バイトが終わったばかりなのは本当です。21時閉店の22時上がりで……この間お姉さんに会ったのがこのくらいの時間だったから、もしかしたら会えるかもしれないとは思ってました……けど待ち伏せてたわけじゃありません! 本当に!」

顔を逸らして焦りながら話す中山くんは「なんかキモくてすみません……」と謝った。私もどう答えていいか分からずに言葉に詰まる。

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