「瑛太、そのへんにしとけって!」

「だいじょーぶー」

焼酎も日本酒も好きじゃないはずなのに、どんどん口に入れていく。
周りが止める声なんて気にしない。
一口飲む度に朱里と山本の顔が浮かんでは、酒と一緒に飲み込んだ。
そのうちだんだん頭がボーッとしてきて、先程の二人の様子を思い出せなくなってきた。

酒を飲んだ罪悪感で朱里の泣き顔がちらつくはずが、今は笑顔ばかり思い出せる。



「あぶねーよ、瑛太!」

飲み屋を出てふらついたのを誰かに支えられた。

「中山くんて実家?誰か迎えに来てくれる?」

「いや、一人暮らし」

「じゃあタクシーだ」

「だあぁいじょうぶー帰れるからー」

「いや大丈夫じゃないから」



誰だか知らないけどうるさいなー
外の風が気持ちいいわー



瑛太は完全に酔っていた。

「瑛太!送ってくから立って!」

「ちがうー、朱里さんちこっち!」

「誰だよ朱里さんって」

「多分中山くんの彼女のことじゃない?」

「彼女のところ行くの?」

「うーん…」

瑛太はスマートフォンを出して電話をかけた。



早く、いつもの優しい声を聞かせて



「もしもしぃ~あかりさぁ~ん」

『………』

「聞こえるぅ?」

電話の向こうからの応答がない。
酔いすぎて間違えて違う人に電話をかけてしまったのだろうか。

「あかりさぁ~ん!」

『瑛太くん?』

「はいは~い、瑛太です!」

優しい声が聞けて安心する。朱里の声はいつも瑛太を落ち着かせてくれる。

『どうしたの?大丈夫?』

「ん~はい~」

『酔ってる…?』

「そんなことないですよ~酔ってません!」

こうして電話をかけることができて、会話もできてるじゃないか。

「朱里さん…会いたいよ…」

急に朱里の顔が見たくなる。声を直に聞きたい。優しく抱き締めてもらいたい。

『うん。私も』

「今から行っていい?」

『いいよ。来て』

「ありがと~」

電話を切るとフラフラと駅まで歩き出す。

「ちょっと!待てって、送ってくから!」

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