間違ってても、愛してる
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始まりは、結婚してから三度目の私の誕生日だった。



妻の誕生日だというのに、夫は取引先と飲み会。

一人ぼっちの私を慰めるべく、職場の同僚たちが祝ってくれた席の帰り道、飲み過ぎて気分が悪くなった私は、駅のベンチで酔いを醒ましていた。



隣の席には、心配そうな後輩の藤井君。

三つ年下の藤井君とは最寄駅が同じ。

住んでいるのは駅を挟んで反対側だけど、私が千鳥足の時は家まで送ってくれる優しい子だ。



夜風の冷たさが気持ち良い。

そろそろ大丈夫かなと思い、立ち上がった瞬間、LINEの着信音が聞こえた。



開いてみると、メッセージの送り主は夫。

画面に表示されたのは「明日、お祝いする」でも「ごめん」でもなく、「終電乗り遅れちゃったから、朝、帰る」



こいつにとって、私って何?

本当に愛されてないんだな......
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