間違ってても、愛してる
胸の奥にチクリと痛みを感じながら、携帯を握りしめる。

「どうぞ」と返信した後、藤井君に向かって、何とか笑顔を作ってみせる。



「ごめんね、もう大丈夫。」

「本当に?」

「うん、もう平気。ありがとう。」

「.....嘘、ついてません?」

「なんで? 酔いならだいぶ醒めたよ。」

「平気じゃない、ですよね? 酔いじゃなくて、楓さんの心が。」

「.....。」



なっ、何を言ってるの?

そんな訳ないじゃない。

私には愛する夫がいて、今、何をしてるか、ちゃんと連絡があって.......



「旦那さん、まだ帰らないんですか?」

「.....うん。」

「じゃあ、帰っても一人?」

「そ、そうだけど、平気。ちゃんと一人で歩いて帰れるし、一日遅れた分、明日はいっぱいお祝いしてもらうから。」



乾いた笑顔を張り付けたまま、踵を返し、藤井君とは目を合わさず、改札に向かって歩き出す。

そうでもしないと、心の中を見透かされそうな気がする。
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