て・そ・ら
4、珊瑚色の中、君とあたし
・11月の学生達
1、まずは対象物をよく見ましょう
2、それから鉛筆を軽くもって
3、紙の上に対象物を描いていきます
4、見たとおりの線を繋げて、影をつけていきましょう
「・・・何、これ」
あたしの呟きに、隣のヒカリちゃんがケラケラと明るく笑う。
「せんせーが配った写生の仕方ですって。あははは、ですよね。こんなの今更配るってあたりがなんだかな~」
「ほんとよね、マジで、今更?だ」
あたしは苦笑してプリントを後ろへと放り投げる。
ここは校庭の隅っこ。運動場や中庭や校舎や、つまり学校の全貌が見渡せる斜面になった草原。グランドのフェンス越しに野球部とサッカー部の練習風景が見えている。フェンスの近くにはタオルや飲み物をもった女の子が数人いて時折歓声をあげては笑っていた。
それぞれのクラブのマネージャー達は汗だくになって土まみれになってボールの出し入れやカートを引いたりしているから、注意も何もする気配はない。
結構うるさいな。・・・うーん、あれが優実が言っていたファンというやつか。
あたしは草の上に座って足を放り出したままでそんなことを思っていた。
11月に入って実力テストが終わった辺りで、いきなり美術部顧問が部室へきて言ったのだ。
今月は写生月間よ~!!って。にこにこと笑顔全開で。
「・・・・せんせー、どうしたんですか、いきなり」
皆はぽかんとして顧問を見上げていた。